中国が推進する「低空経済」とは?ドローン・eVTOLが拓く新市場
中国が国家戦略として力を入れる「低空経済」。ドローンや電動垂直離着陸機(eVTOL)、スマートな航空インフラを軸に、今後5〜10年で十億ドル規模に成長すると見込まれる新しい市場です。一方で、世界展開には乗り越えるべき課題も見え始めています。
「低空経済」とは何か
「低空経済」は、2023年に中国の政策議論の中で正式に導入された比較的新しい概念です。高度3,000メートルより下の空域で行われるさまざまな経済活動を指し、次のような分野を含みます。
- 物流ドローンによる荷物配送などの空の物流
- eVTOLを使った都市間・都市内の旅客サービス
- 災害時の救援や医療搬送などの緊急対応
- 送電線・工場・建築物などのインフラ点検
この分野は、航空とデジタル技術を組み合わせた「次世代のインフラ産業」として位置づけられており、中国国内の複数の国家・省レベルの発展計画にも組み込まれています。
政策が後押しする新産業
低空経済は戦略的な新興産業として、中国で本格的な育成が進められています。今後5〜10年で十億ドル規模の市場へ成長すると予測されており、航空機メーカーだけでなく、通信、地図・測位、クラウドなど幅広い産業に波及効果をもたらすと期待されています。
さらに、中国の今後の第15次5カ年計画でも、低空経済への政策支援が一段と拡大すると見込まれています。長期的な政策の後押しは、企業にとって研究開発やインフラ投資を進めやすくする重要な要素です。
珠海「AERO Asia」が映し出した熱気
こうした流れを象徴するイベントとして、今年11月下旬、中国南部の広東省珠海市にある珠海国際航空ショーセンターで、第2回「AERO Asia」が開催されました。
会場では、低空経済や一般航空に関連する契約が相次ぎ、約70億元(9億8,932万米ドル)超の契約が締結されました。ドローンや軽飛行機などさまざまなカテゴリーで、合計837機の航空機が成約したとされています。
国際的な存在感も増しています。22の国から380社以上が参加し、
- 一般航空機
- eVTOL機
- 各種ドローン
- 新たな低空経済アプリケーション
といった分野の最新技術が一堂に会しました。
また、展示会にあわせて開かれた低空経済をテーマとする会議には、米国、フランス、ロシア、タイ、オーストラリア、カメルーンなどから、300人を超える政府関係者、専門家、企業幹部が参加しました。低空経済が、すでに国際的な対話の対象となっていることが分かります。
世界の空へ飛び立つための課題
一方で、中国国内の企業がドローンやeVTOLを世界の空で飛ばしていくには、いくつかの重要な課題もあります。
- 各国・各地域で異なる航空規制や安全基準への対応
- 都市部の空域管理、騒音対策など社会受容性の確保
- データ保護やプライバシーに関する国際的な信頼の構築
- 充電設備や管制システムなど、スマートインフラの国際標準づくり
低空経済は、機体そのものだけでなく、通信ネットワーク、データ基盤、管制システムなど、多層的なインフラとルールづくりを伴う産業です。そのため、技術開発と同時に、各国との協調や国際ルールへの適合が求められます。
日本とアジアの読者への示唆
中国が加速させる低空経済は、日本やアジア各国にとっても無関係ではありません。周辺国として、次のような視点が考えられます。
- 物流やインフラ点検など、国境をまたぐビジネス連携の可能性
- 災害時のドローン・eVTOL活用など、安全・安心分野での協力
- アジア全体での空域ルールや安全基準づくりへの参加
2023年に政策用語として登場した「低空経済」は、ここ2年あまりで国際会議の主要テーマにまで成長しました。これからの5〜10年で、私たちの物流、移動、災害対応のあり方をどこまで変えていくのか。
ニュースを追うとき、「空のデジタル化」が自分の仕事や暮らしにどうつながるのかを、少し立ち止まって考えてみると、新しい視点が見えてくるかもしれません。
Reference(s):
China bets big on the low-altitude economy, but can it scale globally?
cgtn.com








