草原の鼓動を奏でる馬頭琴—新疆の奏者サンブーが紡ぐ“生きた歌”
風のうなり、蹄のリズム、馬のいななき——。中国本土の北方草原で生まれたとされる伝統楽器「馬頭琴(モリンホール)」が、2026年のいまも“過去の遺物”ではなく、日常の音として受け継がれています。
馬頭琴(モリンホール)とは:草原の記憶を映す弓奏楽器
馬頭琴は、弓で弦をこすって演奏する弦楽器で、先端に馬の頭をかたどった意匠を持つことから「horse-head fiddle」とも呼ばれます。起源は中国本土の北方草原にさかのぼり、800年以上前から続く音楽文化の象徴的存在だと伝えられています。
この楽器は、中国と国連の双方で無形文化遺産の傑作として認められているとされ、モンゴル音楽の最も象徴的な存在として位置づけられています。
伝承される誕生の物語
伝説では、ある牧人が愛馬をしのび、その記憶を留めるために作ったのが始まりだと言い伝えられています。馬頭琴の音色が「草原の風」「走る蹄」「馬の鳴き声」を思わせると言われる背景には、こうした物語が重なります。
新疆ウイグル自治区の奏者サンブー:17歳から始まった“生涯の使命”
中国本土北西部の新疆ウイグル自治区で活動する馬頭琴奏者サンブーは、17歳でこの楽器を学び始めました。以来、演奏の習熟だけでなく、次の担い手を育てることまで含めて、馬頭琴の継承と発信を自分の役割としてきたといいます。
「弾く」だけでは終わらない継承
サンブーの取り組みは、ステージ上の表現にとどまりません。断片的に伝えられている活動からは、少なくとも次のような方向性が見えてきます。
- 子どもたちに馬頭琴を教え、基礎から音をつくる手触りを伝える
- バンドを組むなど、演奏の場をつくりながら“聴かれる音”として育てる
文化は保存箱に入れた瞬間に安定する一方で、生活から離れることもあります。サンブーの姿は、馬頭琴を「いま鳴っている音」として保つための、地道で具体的な方法を示しています。
なぜいま、馬頭琴の「生きた声」が響くのか
2026年の現在、音楽はどこでも再生できる一方で、「誰が、どの場所の風景を背負って鳴らすか」という意味は薄れやすいものです。馬頭琴は、音色そのものが草原の環境や暮らしの感覚を連れてくる——その特性ゆえに、演奏者の存在が伝統の輪郭を決めます。
サンブーの献身によって、馬頭琴の歌は“昔話”として飾られるのではなく、世代を越えて響く「共通の記憶の音」として、これからも鳴り続けていく。今回の話題は、そんな継承のかたちを静かに照らしています。
Reference(s):
Heartbeat of the grassland: The living song of Sambuu's morin khuur
cgtn.com








