中国本土の砂漠化対策が加速?「土の種」で3年固定を狙う新手法
中国本土北西部の研究チームが、砂漠の表面にまく「土の種(soil "seed")」を開発し、人工的な生物土壌クラスト(微生物が作る薄い土の膜)を短期間で形成する取り組みを進めています。砂丘の固定と将来の植生回復の“土台づくり”を一気に前倒しできる可能性があり、2026年現在、実装フェーズに入っている点が注目されています。
「土の種」とは何か:シアノバクテリアを固形化
中国科学日報によると、この「種」の正体は、培養したシアノバクテリア(藍藻類)を使った固形の接種材(固形シアノバクテリア・イノキュラム)です。開発したのは、中国科学院(Chinese Academy of Sciences)傘下の北西エコ環境・資源研究所にある、沙坡頭(Shapotou)砂漠研究・実験ステーションのチームです。
狙いは、乾燥地で風に動く砂を安定させ、植物が根を張れる前段階としての「生物土壌クラスト」を人工的に作ること。研究チームは、従来“100年単位”になりがちな砂の固定を、3年で達成可能な枠組みに近づけるとしています。
なぜ難しいのか:野外では1週間で消える問題
沙坡頭ステーション副所長の趙洋(Zhao Yang)氏は、シアノバクテリアはシャーレではよく増える一方、野外へ移すと1週間足らずで完全に消えてしまうことがあったと説明します。原因の一つは、移動する砂粒がデリケートなバイオフィルム(微生物の膜)を“裂く”ように破壊してしまうことでした。
雨にヒント:加圧噴霧で「砂粒のすき間」に注入
研究チームは自然の降雨に着想し、加圧噴霧でシアノバクテリアを砂粒のすき間へ押し込む方法を試しました。これにより、自然条件で15年かかるとされるクラスト形成が、1〜2年に短縮され、生存率は60%超に達したといいます。
この方法には、
- 直射日光による乾燥を避けやすい
- 砂層が持つ保水性を活用できる
といった利点もあるとされます。
課題は「電気と道路」:そこで固形の“種”へ
一方で、加圧噴霧は電力や道路アクセスに依存し、場所によっては実施できません。車両が入れない地域では、設備を持ち込めず運用が難しい――この制約を突破するため、チームはクラスト形成の素材を運びやすく、まきやすい固形の「種」へと転換しました。
具体的には、シアノバクテリア溶液に有機物や微粒子を一定比率で混ぜ、ペースト状の接種材を作成。趙氏は工程を「セメントを混ぜるのに似ていて、最適な比率と攪拌方法が要る」と表現しています。固形化により、噴霧法の制約を越えて大規模展開の現実性が高まったとしています。
2026年時点の展開:三北防護林計画に組み込み、今後5年で8〜10万ムー
研究チームの固形接種材は、新たな三北防護林計画(Three-North Shelterbelt Program)に組み込まれたとされています。2026年現在の見通しとして、今後5年間で8万〜10万ムー(約5,333〜6,667ヘクタール)の砂漠地を再生対象にする計画が示されています。
「土を作る」発想が示すもの
砂漠化対策というと植林が注目されがちですが、今回のアプローチは、植物の前にまず風で動きやすい砂の表面を安定させる“基盤”を作る発想です。電力・道路といったインフラ条件の差を、運用(散布手段)の工夫で埋めようとする点も、乾燥地の現場実装における一つの現実的な問いを投げかけています。
Reference(s):
Chinese scientists develop soil 'seed' to fight desertification
cgtn.com








