世界最大の電波望遠鏡「FAST」が重要部品を国産化へ:技術自立への大きな一歩
世界最大の単一口径電波望遠鏡「FAST」が、これまで輸入に依存していた核心的な部品を国産技術で置き換えるという、重要な転換点を迎えています。
巨大な「眼」を支える、見えない生命線
FAST(500メートル口径球面電波望遠鏡)の運用において、極めて重要な役割を果たすのが「給電キャビン」です。これは望遠鏡の反射面の上方で、宇宙からの微弱な信号を捉え、精密に位置を制御する装置です。
この約30トンのキャビンを吊り下げ、自在に動かしているのが、合計約4,000メートルに及ぶ6本の巨大な鋼製ケーブルです。1本あたり6トンを超えるこれらのケーブルは、以下のような過酷な環境に耐える必要があります。
- 高さ140メートル、範囲206メートルという広大な空間でのリアルタイム移動と位置決め
- 1日数百回に及ぶ曲げ動作とパルス荷重への耐性
- 少なくとも5年間、断線することなく運用し続ける極めて高い疲労耐性
「輸入」から「自給」へ:過酷な検証プロセス
2016年の運用開始以来、これらのケーブルは輸入製品が使用されてきました(2021年にも一度交換が行われています)。しかし、中国科学院国家天文台は、サプライチェーンの安全性を高めるため、国産化への挑戦を続けてきました。
国産ケーブルの性能を完全に検証するため、研究チームは膨大なテストを実施しています。
- 6万2,000回に及ぶプーリー(滑車)動作の反復試験
- 20万回のパルス疲労試験
こうした厳格な検証の結果、昨年2025年8月には3段階の反復実験をすべてクリアし、国産ケーブルの導入が決定しました。
科学インフラの未来へ向けた波及効果
今回の国産化は、単に部品を置き換えたということ以上の意味を持ちます。材料の選定から製造、評価、テストに至るまでの一連の技術体系を確立したことで、他の大規模な科学インフラプロジェクトにも応用可能な経験が得られたためです。
現在、6本の国産ケーブルはすでにFASTの現場に届いており、交換作業が進められています。この作業は、今から約1ヶ月後、6月下旬までに完了する見通しです。
最先端の科学探究を支える基盤を自国で完結させる。こうした地道な技術的自立の積み重ねが、今後の宇宙観測の安定的な運用を支えていくことになりそうです。
Reference(s):
China's FAST telescope achieves domestic replacement of key component
cgtn.com
