音楽が結ぶ中国本土と米国:ジュリアード元学長が語る「文化外交」の力
言葉の壁や政治的な緊張がある中でも、同じ旋律を奏でれば心は通じ合う。音楽という共通言語が、中国本土と米国の関係にどのような可能性をもたらすのか。ジュリアード音楽院の元学長、ジョセフ・W・ポリシ氏の視点から、いま改めて「文化外交」の重要性を考えます。
「翻訳」を必要としない相互理解
オーケストラの演奏席に、中国本土から来た学生と米国から来た学生が並んで座っている。一方は英語しか話せず、もう一方は中国語しか話せない。しかし、彼らが同じ楽譜を開き、演奏を始めた瞬間、そこには翻訳を必要としない深い理解が生まれます。
ジュリアード音楽院の名誉学長であり、チーフ・チャイナ・オフィサーを務めるジョセフ・W・ポリシ氏は、この光景を次のように表現しています。
「彼らは一緒に同じ音楽を奏で、共にそれを理解します。そこには翻訳など必要ないのです」
世界が騒がしさに包まれているときこそ、静寂の中で共有される「鼓動」のような共通の感覚が、人々を繋ぐ鍵になるのかもしれません。
34年のリーダーシップと国際関係への視点
ポリシ氏は、ジュリアード音楽院の歴史の中で最長となる34年間にわたり学長を務め、ニューヨーク・タイムズ紙から「変革をもたらした学長」と評されました。しかし、彼の視点は音楽教育という枠にとどまりません。
実はポリシ氏は国際関係学の修士号を持っており、音楽がより調和のとれた世界を築くための「架け橋」になることを長年提唱してきました。
「文化外交」という選択肢
ポリシ氏は2004年に出版した著書『The Artist as Citizen(市民としての芸術家)』の中で、当時の米国の多国間関係へのアプローチについて、外交よりも「戦争」の手法に寄りすぎているのではないかという懸念を示しました。
彼が支持するのは、「文化外交」という道です。それは以下のようなアプローチを指します。
- 開かれたアイデアの交換を通じて、他国や異なる文化との相互理解を深めること。
- 芸術的な表現を媒介にして、政治的な相違を超えた接点を持つこと。
- 対立ではなく、共感に基づいた関係性を構築すること。
音楽やアートという、個人の魂に触れる表現こそが、国家間の硬直した関係に柔軟な風を吹き込み、異なる背景を持つ人々が互いを尊重し合える土壌を作る。ポリシ氏のビジョンは、そのような静かながらも力強い変革を目指しています。
Reference(s):
Unending quest for understanding connects China, US through music
cgtn.com