中国本土で「三夏のキャンペーン」が加速:洪水リスクの中、食料安全保障をどう守るか
中国本土では現在、夏の収穫と作付け、そして圃場管理を一体的に進める「三夏のキャンペーン」の正念場を迎えています。しかし、例年以上の大雨と洪水シーズンの到来が、主要な穀倉地帯の生産に影を落としています。食料安全保障の根幹を支える小麦の収穫をどう完遂させるのか、その最前線と課題を探ります。
収穫の正念場に立ちはだかる「雨」の脅威
中国にとって、夏の小麦収穫は年間穀物生産量の20%以上を占める極めて重要なプロセスです。主に河南省、山東省、安徽省、江蘇省といった主要生産地で集中的に行われます。
しかし、5月に入ってから多くの省や直轄市で激しい雨が降り、作物の成長や収穫作業に影響が出ました。さらに、本日6月3日からも新たな大雨のサイクルに入ると予測されており、特に河南省や山東省などの主要地で局地的な激しい対流性気象(激しい雨や雷を伴う天候)が懸念されています。
現状の収穫状況は以下の通りです(6月2日時点):
- 全国的な進捗:約1億1,900万ムー(約793万ヘクタール)を収穫し、全体の約35.09%が完了。
- 地域別の進捗:安徽省(約70%)、河南省(約50%)、江蘇省(20%超)、陝西省(10%超)。
劉国中副首相は河北省の視察において、天候の良いタイミングを最大限に活用して収穫を確保し、気象モニタリングの強化や肥料の安定供給を徹底するよう指示しています。また、農業教育や科学技術の導入を促進し、農家が最新の技術を活用できる体制づくりも急いでいます。
気候変動がもたらす「システム的なリスク」
今回の困難は、単なる季節的な天候不順ではなく、地球規模の気候変動が背景にあると専門家は分析しています。中国の水資源部によると、4月1日の洪水シーズン開始以来、主要河川は概ね安定しているものの、中小河川や山岳地帯では例年より早く、激しい洪水が発生しています。
今年の上半期の全国平均降水量は170ミリメートルに達し、過去の平均を約5%上回りました。特に注目すべきは、以下の点です:
- 河川の危険水位:18の省級地域にある146の河川で、警戒水位を超える水位を記録。これは過去5年間の同時期平均より約50%も高い数値です。
- 複合的な影響:国連食糧農業機関(FAO)と世界気象機関(WMO)の報告書では、過去50年で極端な猛暑や豪雨の頻度と強度が増しており、これが世界的な食料安全保障の脅威となっていることが指摘されています。
中国農業大学の穆月英教授は、極端な気象は単なる自然現象ではなく、農地や作物、農業機械、さらには物流ネットワークや市場価格、農家の所得にまで波及する「システム的なリスク」であると警鐘を鳴らしています。
インフラと保険で高める「レジリエンス」
こうしたリスクに対し、中国本土ではハード・ソフト両面からの対策を強化しています。水資源部の報告によれば、主要な灌漑地区は正常に稼働しており、広範囲にわたる農業浸水は現時点では報告されていません。
特に以下の取り組みが、気象災害への耐性(レジリエンス)を高めています:
- 高規格農地の整備:近代的な灌漑・排水システム、農道、穀物乾燥施設、貯蔵インフラなどの整備が進み、極端な天候への対応力が向上しています。
- 農業保険の活用:災害発生時の農家の回復力を支える仕組みが機能しています。
実際、2026年のデータでは、中国中国人寿財産損害保険が全国で36万件以上の農業保険請求を受け付け、約395万ムーの農地と主要作物に対して、約29億元(約4億4,360万ドル)の保険金を支払ったことが明らかになりました。こうした経済的なセーフティネットが、食料安全保障を維持するための重要な柱となっています。
Reference(s):
China steps up summer harvest efforts amid growing flood risks
cgtn.com



