1400年の歴史をAIが守る?中国本土・大雁塔の「体内診断」で見えた課題と未来
中国本土の古都・西安にそびえ立つ、高さ64メートルの仏教建築「大雁塔(だいがんとう)」。約1400年前の唐代に建てられたこの世界遺産は、これまでその内部構造や詳細な健康状態が完全には解明されていませんでした。しかし今、最先端のAIと物理学の力が、レンガ一つ壊すことなく、この古建築の「体内」を可視化しようとしています。
「指紋」のように素材を特定する最新技術
これまで、大雁塔の調査は主に表面的なひび割れや風化などの「外見」に限定されていました。しかし、西安建築科技大学などの研究チームは、衛星、ドローン、そして電磁波を組み合わせた「空・陸・宇宙」の立体的な検診システムを構築しました。
特に注目されるのが「電磁共鳴技術」の導入です。この技術のポイントは以下の通りです。
- 素材固有の周波数: あらゆる物質は、指紋のように固有の電磁共鳴周波数を持っています。
- 非破壊検査: 特定の波を壁に送り込むことで、ドリルで穴を開けたりサンプルを採取したりすることなく、内部構造をマッピングできます。
この調査により、大雁塔が「版築(はんちく)の芯」を中心に、唐代のレンガ、その後の明代の補強材、そして内部の木製柱という多層構造であることが初めて判明しました。さらに、唐代と明代の層の間に50ミリメートルの隙間があるという、これまで未知だった構造上の特徴も見つかっています。
静かに忍び寄る「見えない脅威」
構造が明らかになる一方で、塔がゆっくりと劣化している原因も突き止められました。最大の要因は「水」です。
地盤から染み出した水分がレンガ壁を上昇し、それに溶け込んだ塩分が結晶化。その結晶が膨張することでレンガを内側から砕いていくというメカニズムが明らかになりました。特に冬場の凍結と融解のサイクルが、この劣化を加速させています。
また、塔が北西に約0.9度わずかに傾いていることも判明しました。直ちに崩壊するレベルではありませんが、この傾きがあることで、地震などの強い衝撃が加わった際に上部構造にかかるストレスが40%以上増幅されるというリスクが指摘されています。
AIが導き出す「処方箋」とデジタルツインの活用
膨大な視覚データの解析にはAIが活用されています。写真からひび割れやレンガの剥離、モルタルの浸食を自動的に識別するAIシステムを導入したことで、これまで人間が数日かけて行っていた作業を、90%以上の精度でわずか数時間に短縮することに成功しました。
研究チームは今後の展望として、以下のステップを提案しています。
- デジタルツインの構築: 塔の高精度な仮想コピー(デジタルツイン)を作成し、現実の塔に手を加える前に、仮想空間でさまざまな保護戦略をシミュレーションする。
- リアルタイム監視: 構造の安全性を常時監視し、異常があれば即座に警告を発するシステムの導入。
- データベース化: 損傷のライフサイクルを記録し、標準的な安全アーカイブを構築する。
歴史的な建造物を守るために、最新のデジタル技術を導入する試みは、世界各地で見られます。伝統的な美しさを維持しながら、目に見えないリスクを科学的に管理する。AIと古建築の融合は、私たちが過去の遺産を未来へ引き継ぐための、新しいスタンダードになるのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com



