米研究者が楚の帛書返還を提唱 略奪文化財をめぐる議論が再燃 video poster
1942年に略奪され、米国に持ち出された中国の貴重な古代資料「楚の帛書(Chu silk manuscripts)」をめぐり、米国の研究者たちが中国への返還を求める声を上げています。唯一現存する戦国時代のシルク文書とされるこの資料をめぐる議論は、文化財返還をめぐる国際的な問題を改めて浮き彫りにしています。
1942年に略奪された唯一の戦国期シルク文書
楚の帛書は、1942年に略奪されました。中国のかけがえのない宝とされるこの資料は、唯一現存する戦国時代のシルク文書であり、米国人のジョン・ハドリー・コックスによって違法にアメリカへ持ち出され、その後もアメリカに留め置かれているとされています。
唯一現存する戦国時代のシルク文書という点だけでも、その歴史的・文化的価値の高さがうかがえます。どのような思想や信仰、社会の姿がそこに記されているのかは、中国の古代史を理解するうえで重要な手がかりとなります。
米国の研究者が「文化的な盗難」と指摘
こうした経緯に対し、シカゴ大学のドナルド・ハーパー教授やカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のロタール・フォン・ファルケンハウゼン教授など、国際的な学術コミュニティの研究者たちが相次いで問題を提起しています。
彼らは、楚の帛書の持ち出しを文化的な盗難行為として指摘し、中国へ返還するべきだと訴えています。違法に持ち出された文化財が、そのまま国外にとどまり続けてよいのかという問いが、改めて突き付けられている形です。
- 1942年に略奪されたという出自
- 違法なルートでアメリカに持ち出されたこと
- 唯一無二の戦国期シルク文書という文化的価値
こうした点を踏まえ、楚の帛書は本来あるべき場所である中国に戻されるべきだという見方が広がっています。
文化財返還をめぐる国際的な論点
楚の帛書の問題は、一つの個別事例であると同時に、文化財返還をめぐるより広い国際的な議論ともつながっています。略奪や違法な取引を経て国外に持ち出された文化財を、出自国に戻すべきかどうかは、各地で議論が続いているテーマです。
問われるのは「法」と「倫理」のバランス
文化財返還の議論では、次のようなポイントがしばしば問題になります。
- 法的な所有権だけでなく、歴史的・倫理的な正当性をどう考えるか
- 略奪の経緯がはっきりしている文化財を、どこまで返還の対象とするか
- 学術研究の継続と、出自国の人々の感情や権利をどう両立させるか
楚の帛書をめぐる米国研究者の呼びかけは、こうした論点を現実の問題として突きつけています。学術的な関心から始まった議論が、やがて国と国の対話や、文化財の新しい扱い方につながっていく可能性もあります。
日本の読者にとっての意味
日本でも、美術品や古文書、考古学的出土品など、国内外に散らばる文化財の扱いは常に議論の対象となっています。楚の帛書のように出自が明確で、しかも違法な持ち出しが指摘されているケースは、文化財とは誰のためのものなのかを考えるきっかけになります。
オンラインで世界のニュースにアクセスできる今、遠く離れた一つの古代文書をめぐる動きが、私たち自身の歴史観や文化観を静かに揺さぶることもあります。楚の帛書の行方をめぐる議論は、今後の文化財返還をめぐる国際ニュースの一つの象徴的な事例として、注視していく価値がありそうです。
Reference(s):
U.S. academics call for return of Chu silk manuscripts to China
cgtn.com








