世界は一つの家族 インド哲学が示すアジア協力の新モデル video poster
国際ニュースを日本語で追う読者の間で、インド発の古い思想がアジア協力のヒントとして静かに注目されています。キーワードは、古代インド哲学の一つとされる「Vasudhaiva Kutumbakam」です。
インドの古い思想「Vasudhaiva Kutumbakam」とは
インドのKhushtar Heritage CollectiveのディレクターであるKhushi Shah氏は、インドの文化外交を語る中で、Vasudhaiva Kutumbakamという考え方の重要性を強調しました。このサンスクリット語の言葉は、「世界は一つの家族」という意味を持つとされ、国や地域の境界を越えて、人々を一つの共同体として捉える世界観を示します。
Shah氏によれば、この包括的な世界観こそが、インドの文化外交の土台になっているといいます。文化や価値観を押しつけるのではなく、家族の一員として互いを尊重し合う姿勢が重視されているという説明です。
競争から「家族的な協力」へ:アジアへの提案
アジアの国際関係は、とかく影響力や国力をめぐる競争として語られがちです。Shah氏は、こうした「力の競争」から、「家族のような協力」へと発想を転換できるのではないかと提案しました。
ポイントは、近隣国や地域をライバルではなく、「家族の一員」として見ることです。家族であれば、短期的な損得だけでなく、長期的な信頼や安定を重視します。Shah氏は、この姿勢がアジアにおける本当の意味での地域パートナーシップへの道を開くと指摘しました。
カギとなる3つの分野:気候、グリーンエネルギー、成長
では、その「家族的な協力」は、具体的にどこで問われるのでしょうか。Shah氏がとくに重要だと挙げたのは、次の3つの分野です。
- 気候変動への取り組み(Climate action)
災害や気候変動の影響は国境を選びません。アジアのどこかで起きた異常気象は、サプライチェーンや食料価格を通じて他の地域にも影響します。「家族」としての視点から見れば、温室効果ガスの削減や適応策は、誰か一国の負担ではなく、共同の責任として捉え直す必要があります。 - グリーンエネルギー(Green energy)
再生可能エネルギーや省エネ技術の普及は、経済と環境の両立に直結します。Shah氏は、技術やノウハウを囲い込むのではなく、共有し合うことで、アジア全体のエネルギー転換を加速できると述べました。 - 持続可能な成長(Sustainable growth)
短期的な成長率だけでなく、格差の縮小や環境負荷の軽減を含めて、長く続く成長をどう設計するかが問われています。家族というイメージに立てば、誰かが取り残される成長ではなく、地域全体の底上げを目指す発想が自然に生まれます。
「共有の責任」という視点
Shah氏が繰り返し強調したのは、「共有の責任」という言葉です。アジアの課題は、一つの国だけが原因で、一つの国だけが解決できるものではありません。気候変動、エネルギー、安全保障、どれもが相互依存の中で生じています。
だからこそ、Vasudhaiva Kutumbakamの発想を使えば、次のような問いかけが生まれます。
- 私たちは、近隣を本当に「家族」として扱っているだろうか。
- 負担だけでなく、利益も公平に分かち合う仕組みを作れているか。
- 対立よりも、協力を選ぶ余地がまだ残っているのではないか。
こうした問いは、特定の国を批判するためではなく、アジア全体の視点を一段引き上げるためのものだといえるでしょう。
日本にとっての意味:アジアをどう見るか
日本の読者にとっても、Vasudhaiva Kutumbakamの発想は、アジアを見る視点を少し変えるヒントになりそうです。国際ニュースを追うとき、「どの国が得をしたか」だけでなく、「アジアという家族全体にとってどうか」という見方を加えることで、ニュースの意味合いが違って見えてきます。
たとえば、気候対策やグリーンエネルギーに関する地域協力の枠組みを読むとき、「合意の有無」だけではなく、
- どの程度、責任や負担が分かち合われているのか
- 長期的に見て、アジア全体の安定と成長につながる設計になっているか
といった観点からニュースを読み直すことができます。
家族としてのアジアを想像する
2025年の今、アジアは経済成長の中心であると同時に、気候変動や安全保障など多くの課題も抱えています。そうした中で、インドの古い言葉が示す「世界は一つの家族」という視点は、対立でも楽観でもない、もう一つの選択肢を静かに提示しているように見えます。
隣国や近隣地域を、交渉相手や競争相手としてだけでなく、「同じテーブルを囲む家族」として想像してみる。その小さな意識の変化が、これからのアジア協力の形を少しずつ変えていくのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








