英国労働党政権、鉄道3社を2025年に再公有化へ 新法で方針転換
イギリスで、鉄道の再公有化をめぐる大きな政策転換が進んでいます。労働党政権が新法に基づき、2025年中に大手鉄道運行会社3社を公的所有に戻す計画を打ち出しました。
新法と労働党政権の方針
労働党政権のイギリス政府は水曜日、Passenger Railway Services Act 2024に基づき、3つの主要な鉄道運行会社を再公有化する方針を発表しました。この法律は先週末、貴族院で承認されたばかりです。
今回の決定は、旅客鉄道サービスを整理し直し、より一体的で統合された鉄道システムを目指す最初の一歩だとされています。
どの鉄道会社が対象になるのか
再公有化の対象となるのは、いずれもイギリスの鉄道網で重要な役割を担っている3社です。
- South Western Railway 南西ロンドンとイングランド南部で平日1500本を超える列車を運行し、ロンドン中心部への主要な通勤ルートを担う
- c2c ロンドンのフェンチャーチ・ストリート駅とショーブリネスを結び、東ロンドンとサウス・エセックスの26駅をカバーする
- Greater Anglia ロンドンとノーフォーク、サフォーク、ケンブリッジシャー、ハートフォードシャー、エセックスを結び、通勤列車と地域列車を運行する
計画では、South Western Railwayが2025年5月に最初に公的所有へ移行し、続いて7月にc2c、秋にはGreater Angliaが順次続くとされています。
アレクサンダー運輸相のねらい
ヘイディ・アレクサンダー運輸相は、この再公有化を「より統合された鉄道システム」をつくるための第一歩だと位置づけています。複数の事業者に分かれている鉄道運行を、一体的に管理しやすくすることが狙いです。
公的管理の事業者で見えた改善
アレクサンダー氏はBBCのインタビューで、すでに政府の管理下で運営されているLNERやSoutheasternの実績を、再公有化の根拠として挙げました。
とくにLNERでは、人員不足が原因の列車運休がゼロまで減少し、それ以外の理由による運休もおおよそ5パーセント程度まで抑えられていると説明しています。こうした例から、公的所有の方が運行の安定につながるとアレクサンダー氏は主張しています。
コスト面の論点:管理委託料との比較
今回の方針では、鉄道システム全体を監督する新たな組織Great British Railwaysが設立される予定です。政府は、この組織をアームズ・レングスボディと位置づけ、一定の独立性を持たせつつ全体の運営を見渡す役割を担わせる考えです。
アレクサンダー氏によれば、3社の再公有化とGreat British Railwaysの設立にかかる費用は、現在、民間の運行会社に支払っている年間1億5000万ポンド(約1億9000万ドル)の管理手数料よりも、かなり低く抑えられる見込みだといいます。政権側は、コスト面でも公的所有の方が合理的だと強調しています。
批判的な声:所有者が変わるだけでは不十分
しかし、この方針に対しては懐疑的な見方もあります。鉄道事業者団体Rail Partnersのアンディ・バグナル最高経営責任者は、所有者を民間から政府に変えるだけでは、鉄道が抱える構造的な問題は解決しないと指摘しています。
バグナル氏の見方は、運行の仕組みや投資のあり方、人材や設備など、鉄道システムを支える要素は多岐にわたり、単純な公・民の区分だけでは語れないというものです。制度設計や運営の具体的な中身が問われているともいえます。
通勤路線への影響と今後の焦点
South Western Railway、c2c、Greater Angliaはいずれも、ロンドンと周辺地域を結ぶ通勤・通学路線として重要な役割を担っています。再公有化が進むことで、運行の安定性や利用者サービスがどこまで変わるのかは、多くの利用者にとって関心事となりそうです。
今後は、再公有化のプロセスがどれだけ円滑に進むのか、また新たな監督組織であるGreat British Railwaysが、複数の運行会社をどのように調整していくのかが、イギリス国内の大きな論点になっていくと考えられます。
日本の読者が読み取れるポイント
今回の鉄道再公有化をめぐるイギリスの動きは、国際ニュースとして、日本にとっても示唆に富んでいます。鉄道のような公共インフラを、公的主体が運営するのか、民間に委ねるのかは、多くの国で議論が続くテーマです。
公的所有と民間委託のどちらが「正解」かという単純な話ではなく、サービスの質、コスト、透明性、利用者の利便性をどう両立させるかが問われている点は、日本の公共交通や地域インフラを考えるうえでも共有できる視点です。イギリスの事例が、私たち自身の足元の公共サービスを見直すきっかけになるかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








