ダマスカスで外出禁止令解除 暫定政権が難民帰還を呼びかけ
アサド政権の崩壊後、シリアの首都ダマスカスで外出禁止令が解除され、暫定首相モハンメド・アル=バシール氏が難民に帰還を呼びかけています。軍事バランスが急速に変化するなかで、人道危機と再建、そして地域外交が複雑に絡み合っています。
ダマスカスの外出禁止令解除と暫定政権の誕生
シリア軍事作戦局は水曜日、ダマスカスとその周辺地域で続いていた外出禁止令を解除し、住民に職場への復帰を促すと発表しました。この動きは、バッシャール・アル・アサド氏の退陣後の混乱から日常を取り戻そうとする試みと位置づけられています。アサド氏の国外逃亡により、およそ半世紀にわたる一族支配が終わりました。
発表と歩調を合わせる形で、暫定首相に指名されたモハンメド・アル=バシール氏が、国外に避難した難民に向けて帰還を呼びかけました。同氏は北西部の地方指導者を務めていた人物で、2025年3月までの移行政権を率いるよう火曜日に任命されたとされています。
HTS主導の急速な政変
アル=バシール氏の任命は、イスラム主義勢力ハヤート・タハリール・アル・シャーム(HTS)が主導する武装連合の電撃的な攻勢の直後に行われました。この連合は、北部から11月27日に開始したとされる攻勢からわずか12日でダマスカスを掌握しました。アサド政権軍は首都を失い、アサド氏本人は国外へ逃れています。
新たな指導部は、イスラム主義色の強いHTSが主導権を握りつつも、宗教や民族の少数派に対して権利を保障すると繰り返し強調しています。
「全ての被害者に正義を」ジョラニ氏のメッセージ
HTSの指導者アブ・モハンメド・アル=ジョラニ氏は、アサド政権下の「被害者」に正義をもたらすと誓い、拷問に関与したとされるアサド政権の当局者については恩赦の対象としない考えを示しました。これは、旧政権関係者の処遇と和解プロセスをめぐって、国内外で今後大きな議論を呼ぶ可能性があります。
マンビジでの停戦とクルド主導勢力の撤退表明
シリア北東部の都市マンビジでは、クルド主導の部隊とトルコの支援を受ける武装勢力との間で激しい戦闘が続いた末、米国の仲介による停戦が成立しました。アラブ系住民が多いこの戦略拠点では、HTS主導勢力が日曜日にアサド政権軍を排除した後も衝突が続いていました。
クルド主導の連合組織「シリア民主軍(SDF)」は、戦闘で218人の戦闘員が死亡したと明らかにし、可能な限り早く同地域から撤退する意向を示しています。米中央軍は、マイケル・クリラ司令官がシリア国内の米軍基地を訪問し、SDF側と会談したことを確認しました。
同じ時期に、トルコの支援を受ける勢力は、北部の要衝タル・リファアトをクルド勢力から制圧したと伝えられています。アンカラは、SDFの中核を成すクルド人民防衛隊(YPG)を、トルコ、米国、欧州連合(EU)がテロ組織に指定しているクルド労働者党(PKK)の延長線上にある組織とみなしています。
イランとカタール、変動する地域秩序への対応
イランの最高指導者アリー・ハーメネイー師は、アサド氏退陣がテヘランの地域での影響力を弱めるとの見方を退けました。シリアがイスラエルへの「抵抗」の一翼を担ってきたことを認めつつも、その役割が低下してもイランの力は損なわれないと主張し、アサド政権崩壊の背後には米国、イスラエル、そして名指ししない「近隣国」がいると非難しました。
一方、カタールはダマスカスの大使館を再開する方針を発表しました。カタール側は、歴史的な関係とシリア再建への支援を理由として挙げ、人道支援物資を届ける「空の回廊」を通じてシリア国民を支えるとしています。カタールは、2011年7月の反政府抗議拡大を受けて駐シリア大使を召還し、大使館を閉鎖していました。
続く人道危機:物価高騰、避難民、そして地雷
国連によると、シリアの人道状況は依然として深刻です。病院は患者であふれ、食料不足が続くなか、多くの避難民が深い心的外傷を抱えています。イドリブやアレッポなどの都市ではパンの価格が900%も高騰し、HTS主導の攻勢が始まったとされる12月27日以降、100万人を超える人々が家を追われました。
国連人道問題調整事務所(OCHA)は、この10日間だけでも少なくとも52か所の地雷原が確認され、住民の移動や支援物資の輸送の大きな妨げになっていると報告しています。こうした状況は、帰還を検討する難民にとっても安全面で大きな不安要因となります。
難民帰還と和解へのハードル
アル=バシール暫定首相が難民の帰還を呼びかける一方で、戦闘の余波、人道危機、地雷の存在など、現場には多くのリスクが残されています。新指導部が掲げる「全ての宗教・民族集団の権利保障」や「被害者への正義」が、具体的な制度や安全確保のかたちとなるかどうかが問われています。
今後の焦点となるのは、
- 少数派住民を含む包摂的な統治体制を構築できるか
- 旧政権関係者の処遇をめぐる司法プロセスを公平に進められるか
- 地雷除去やインフラ復旧を通じて、安全に暮らせる環境を整えられるか
- 地域や国際社会の支援を、人道と再建にどこまで結びつけられるか
アサド一族支配の終焉から、新たなシリアのかたちを模索するプロセスは始まったばかりです。ダマスカスの外出禁止令解除と難民帰還の呼びかけは、その出発点にすぎないとも言えます。
Reference(s):
Curfew in Damascus lifted as interim PM calls refugees to return home
cgtn.com








