米国の追加関税で世界市場が急落 各国が一斉反発
リード:米国の関税強化が揺らす世界経済
2025年4月、米国が打ち出した攻撃的な追加関税をきっかけに、世界の金融市場が大きく動揺しました。ニューヨーク市場では主要株価指数が急落し、中国や欧州連合(EU)など各国・地域が一斉に反発。関税をめぐる「米国対世界」の構図が鮮明になっています。
米国の追加関税でウォール街が急落
米国の関税強化が発表された直後、ウォール街は数年ぶりの大荒れとなりました。ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は直近高値から20%以上下落し、いわゆるベアマーケット(弱気相場)入り。ダウ工業株30種平均も調整局面に入りました。
特に直近2営業日では、ダウが9.3%安、S&P500種指数が10.5%安、ナスダックが11.4%安と、主要3指数がそろって2ケタ近い下げを記録しています。
時価総額で世界有数の企業であるアップルは、その打撃の大きさが象徴的です。iPhoneをはじめとする主力製品の製造を中国の生産拠点に大きく依存しているため、関税とサプライチェーンの先行き不透明感が重くのしかかりました。ウォルマートやナイキといった消費関連の大企業も、新たな関税の対象やコスト増への懸念から売り込まれています。
波紋は世界へ アジア・欧州市場も連鎖安
市場の動揺は米国だけにとどまらず、アジアや欧州の主要な株式市場も軒並み下落しました。投資家のあいだでは、「貿易戦争」の激化が世界の貿易量や企業収益を押し下げ、世界経済の減速につながるとの警戒感が広がっています。
中国が報復関税とレアアース規制で応酬
米国の措置に対し、中国は迅速かつ強い対応に踏み切りました。4月10日正午から、一部の米国産品に対し34%の報復関税を課す新たな措置を発動。また、ハイテク産業や先端製造業に不可欠なレアアース(希土類)の主要品目についても、輸出規制を強化すると表明しました。
中国の通商当局は声明で、米国の関税は「国際貿易ルールに合致せず、中国の正当な権益を深刻に損なう典型的な一方的措置だ」と強く批判しています。米国による「相互主義」を名目とした関税が、問題解決どころか自国の消費者や世界経済に悪影響を与えるとの認識です。
EUも対抗措置を準備 「世界経済への大打撃」
米国の最大の貿易相手の一つであるEUも、強い懸念と対抗姿勢を示しました。欧州委員会のフォンデアライエン委員長は、トランプ政権による追加関税を「世界経済に対する大きな打撃だ」と非難し、まずは米国産の鉄鋼製品を中心とした対抗措置の第1弾をまとめたと明らかにしました。
フォンデアライエン委員長は、「あらゆる米国の貿易相手が標的となる中、混乱の中に秩序を見いだせない」と述べ、不確実性が保護主義のさらなる拡大を招き、特に脆弱な国々を含む世界中の人々に深刻な影響が及ぶと警告しました。
伝統的な同盟国も批判 「友好国のすることではない」
これまで米国と緊密な関係を築いてきた同盟国からも、距離を置くような発言が相次ぎました。イギリスのキア・スターマー首相、イタリアのジョルジャ・メローニ首相、オーストラリアのアンソニー・アルバニージ首相などが、それぞれ米国の関税方針に懸念を表明しています。
アルバニージ首相は、「米政権の関税には論理的な根拠がなく、両国のパートナーシップの基盤にも反する。これは友好国のすることではない」と述べ、強い不満を示しました。フランスのマクロン大統領は欧州企業に対し、米国での投資計画の凍結を呼びかけ、カナダのマーク・カーニー首相も、自国経済を守るために「対抗措置を取らざるを得ない」と警告しています。
「米国対世界」という構図と専門家の見方
今回の一連の動きについて、専門家からは「米国が自ら主導してきた国際秩序に背を向け、世界と対立する姿勢を鮮明にしている」との指摘が出ています。
中国社会科学院アメリカ研究所の研究員である魏南枝氏は、中国国際テレビ(CGTN)の取材に対し「米国が現在『不公平だ』とみなしている国際秩序は、もともと米国の主導で形成され、長年にわたり米国自身が最大の受益者だった」と説明します。
そのうえで魏氏は、米ドルの覇権構造が米国の製造業労働者にとって課題になっているものの、「相互主義」を掲げた関税だけで短期間に製造業を本格的に呼び戻すことは不可能だと指摘しました。
北京の対外経済貿易大学の崔凡教授も、米国の関税政策は国内物価を押し上げ、国民や企業の負担を増やすと分析します。現在のグローバルな価値連鎖(バリューチェーン)のもとでは、関税だけで製造拠点を米国内に戻すことは難しいという見方です。
さらに崔教授は、トランプ氏が関税を柔軟に引き上げたり引き下げたりできる「修正権限」を持つことが、政策の不安定さを高め、貿易全体を萎縮させていると指摘。近い将来の世界貿易環境は「決して楽観できない」と警鐘を鳴らしています。
私たちは何を見るべきか 長期化リスクと生活への影響
米国の追加関税と各国の報復措置は、一過性の市場ショックにとどまらず、貿易ルールやサプライチェーンの見直しを迫る可能性があります。関税の応酬が続けば、企業はコスト増や調達の混乱に直面し、消費者物価にも上昇圧力がかかります。
日本を含む多くの国・地域の企業は、米国や中国、欧州など複数の市場をまたぐ形で生産や販売ネットワークを築いています。どこか一つの国が大きく方針を変えれば、その影響は世界中に波及せざるをえません。
今回浮かび上がったのは、「保護主義的な政策は、自国を守るどころか、結局は自国の消費者と企業、そして世界経済全体を傷つけかねない」というジレンマです。今後、各国がどのように対話と協調の道筋を探っていくのかが、2026年に向けた国際経済を占う重要なポイントになりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








