トランプ米大統領がシカゴ連邦介入を示唆 D.C.に続き権限拡大に懸念も
トランプ米大統領が、首都ワシントンD.C.での犯罪取り締まりに続き、シカゴなど他の大都市にも連邦政府として介入する可能性に言及しました。治安対策をめぐる動きは、アメリカの憲法体制と大統領権限のあり方に波紋を広げています。
トランプ大統領「シカゴを次にまっすぐにする」
トランプ米大統領はある金曜日、記者団に対し、シカゴへの犯罪取り締まりを連邦レベルで強化する考えを示しました。すでに野党・民主党系の首長が率いるワシントンD.C.に介入しており、同じく民主党系の自治体であるシカゴを名指しした形です。
大統領は、ワシントンD.C.の治安状況について「ひどい」と表現し、必要であれば連邦政府が首都の運営を全面的に引き取る考えまで示しました。ワシントンD.C.のバウザー市長に対しては「やるべきことをやらなければ、長く市長でいられない」と批判しました。
さらにトランプ大統領は「シカゴはめちゃくちゃだ」と述べ、市長を批判したうえで「次にそこをまっすぐにするだろう」と発言しました。その後、ニューヨークも次の対象になると付け加えています。
ワシントンD.C.での州兵・連邦要員展開が先行例に
トランプ大統領は、ワシントンD.C.で暴力犯罪が「手に負えない状態」にあるとし、根拠となる具体的な数字は示さないまま、D.C.州兵や連邦捜査官を街頭に展開しました。目的は「犯罪の抑制」と説明されています。
一方で、最近の統計では、ワシントンD.C.の犯罪件数は2023年のピーク以降、減少傾向にあるとされています。しかし、大統領はこうした統計を退け、自身の危機認識を優先していると伝えられています。
ワシントンD.C.はアメリカ合衆国憲法によって設けられた特別な連邦地区で、いずれの州にも属さず、最終的な権限は連邦議会にあります。このため、連邦政府がD.C.に介入する余地は、一般の州や都市と比べて大きいとされています。
シカゴ市長「軍の投入は解決策ではない」
トランプ大統領から名指しされたシカゴのブランドン・ジョンソン市長は、大統領発言を「重大なもの」と受け止めているとしたうえで、現時点で連邦政府から正式な連絡や調整は受けていないと明らかにしました。
ジョンソン市長は、トランプ政権のやり方について「調整がなく、不必要で、賢明ではない」と批判しました。そのうえで、「連邦政府がシカゴの犯罪や暴力を減らすためにできることは多くあるが、軍を送り込むことはその一つではない」と述べ、軍事的色彩の強い介入に反対する立場を表明しました。
ニューヨーク、サンフランシスコにも矛先
トランプ大統領は、シカゴに続いてニューヨークを「次の対象」とし、さらにサンフランシスコについても連邦政府による介入を示唆しました。いずれも民主党系の市長が率いる大都市です。
ニューヨーク市では、ここ数十年にわたって暴力犯罪が着実に減少しており、アメリカの大都市の中では比較的低い殺人率となっていると報告されています。それでも、大統領は治安への懸念を理由に、連邦レベルでの関与拡大に言及しています。
問われる大統領権限と憲法の線引き
トランプ大統領は、自身の行動を「住民が再び安心して暮らせるようにするための緊急措置」と位置づけています。一方で、民主党やその他の批判的な声は、大統領が憲法の枠を超えて権限を拡大し、民主党系の市が運営する自治体に連邦政府の統制を強めようとしていると懸念を示しています。
アメリカ合衆国憲法修正第10条は、連邦政府に明確に与えられていない権限は、州や人々に留保されると定めており、連邦政府が州や自治体の制度・刑事司法に介入することを一般的には制限しています。市民の憲法上の権利が侵害されている場合など、特別な状況を除けば、連邦政府が州や市の官僚機構を「乗っ取る」ことは難しいとされています。
トランプ大統領は、ワシントンD.C.以外の都市に対して、具体的にどの法律や仕組みを使って介入するのかについては説明を控えており、その実現可能性や法的根拠には疑問も残っています。
アメリカ政治の「治安」と「分権」をどう見るか
今回の一連の動きは、次のようなポイントを浮かび上がらせています。
- 治安不安への対策として、どこまで強い権限行使が許されるのか
- 連邦政府と州・自治体の権限分担を定める憲法原則を、どのように解釈するのか
- 治安政策が、与野党対立や都市と連邦の政治対立とどのように結びついているのか
シカゴやニューヨーク、サンフランシスコといった象徴的な大都市をめぐる攻防は、治安の議論であると同時に、アメリカの民主主義と統治構造のあり方を問う政治的な争点にもなっています。
日本からこのニュースを見るとき、単に「治安の悪化」か「大統領の強硬姿勢」かといったラベルではなく、地方自治と中央集権のバランス、憲法がどこまで権力を縛るべきかという論点としても捉えると、アメリカ政治の構図が立体的に見えてきます。
Reference(s):
Trump threatens federal intervention in Chicago, following D.C.
cgtn.com








