EUが「デジタル主権」へ舵を切る:米国クラウド依存からの脱却を目指して
欧州連合(EU)が、米国のデジタル企業や海外製チップへの依存を減らし、欧州独自の代替手段を確保するための大規模な新戦略を準備しています。デジタルインフラを他国の意向に委ねることへの危機感が高まるなか、この動きは欧州の経済安全保障における大きな転換点となる可能性があります。
なぜ今、「脱・米国依存」なのか
EUが特に懸念しているのは、クラウドサービスにおける圧倒的な米国企業のシェアです。現在、欧州のクラウド市場の約70%を米国のプロバイダーが占めており、実質的にデジタル基盤の大部分を外部に依存している状態にあります。
こうした状況に対し、欧州内で警戒感が高まった背景には以下の要因があります。
- 「キルスイッチ」への懸念: 政治的緊張が高まった際、米国の判断ひとつで重要なデジタルインフラが停止させられるリスク(いわゆるキルスイッチ)への不安。
- 地政学的リスクの現実化: 2025年2月に、トランプ米政権が国際刑事裁判所の裁判官に制裁を科した事例が影響しています。実際にニコラ・ギユ裁判官が、米国システムであるVisaカードへのアクセスを失ったことで、デジタル基盤が政治的ツールとして利用される現実が浮き彫りになりました。
「デジタル主権」を取り戻すための具体策
EUは「地経学的なパワー争いにおける地位を取り戻す」ため、チップ(半導体)、クラウドコンピューティング、そしてAIに関する新しい規制パッケージを今週の水曜日に提示する予定です。
EUの競争担当委員であるテレサ・リベラ氏は、「私たちは自前の能力を開発する必要がある。自分たちの決定や価値観、そして健全に機能している経済やサービスを、外部から影響される状況にしてはならない」と強調しています。
深まる大西洋間の緊張と今後の展望
この動きに対し、米国側は警戒を強めています。アンドリュー・パズダー米国EU大使は、こうした動きが保護主義的な方向に向かうことに警鐘を鳴らしており、「他者を排除することでAI経済へ参入することはできない」と主張しています。
デジタルインフラの自立を目指すEUと、市場へのアクセスを維持したい米国。この対立は、単なるビジネスの競争を超え、次世代のテクノロジー覇権を巡る「大西洋間の緊張」という新たな局面を迎えています。
効率性と利便性を追求して構築された現在のグローバルなテックエコシステムが、安全保障という視点からどのように再編されていくのか。私たちは今、その過渡期に立っているのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com