トランプ関税で苦しむグローバルサウス 専門家が警鐘
2025年12月現在、トランプ米大統領が打ち出した包括的な関税政策をめぐり、アジアや中南米、カリブ海などグローバルサウスの国々への影響が強く懸念されています。本記事では、専門家や関係者の声をもとに、そのリスクと今後の論点を整理します。
グローバルサウスに重くのしかかるトランプ関税
グローバルサウスとは、アジア、アフリカ、中南米などの新興国・開発途上国を指す言葉です。これらの国々は、世界の生産拠点や観光地として国際経済を支えながらも、外部ショックに弱いという構造的な脆さを抱えています。
そうした国々にとって、トランプ米大統領による大規模な追加関税は、新たなリスク要因になっています。米マサチューセッツ大学アマースト校の経済学者ジェイアティ・ゴーシュ氏は、寄稿文の中で、輸出注文のキャンセルや遅延がサプライチェーンを揺るがしていると警鐘を鳴らしました。
ゴーシュ氏は、これまでも米国が自ら招いた経済危機では米国経済も打撃を受けてきたものの、その最も重い負担は常に開発途上国が負ってきたと指摘します。今回も、輸出注文のキャンセルや引き延ばしがすでに生産を押し下げ、失業を増やしつつあるとし、こうした流れが続けば、グローバルサウスが矢面に立つ形で人為的な世界不況が引き起こされかねない、と警告しています。
サプライチェーンへの打撃:注文キャンセルが連鎖するとき
サプライチェーンとは、原材料の調達から製造、輸送、販売に至るまで、モノやサービスが届けられる一連の流れのことです。グローバルサウスの多くの国は、このチェーンの重要な一部を担っています。
関税が引き上げられれば、輸入国である米国側の企業はコスト増を避けようと、発注を削減したり納期を先送りしたりする可能性があります。その結果、輸出側の工場では生産ラインの稼働率が落ち、労働者の雇用や賃金にもすぐ影響が及びます。
ゴーシュ氏が懸念するのは、こうした個々のキャンセルや遅延が積み重なり、世界各地で同時多発的に経済活動を冷やしてしまう点です。特に、外貨獲得源が限られる開発途上国にとって、輸出の減少は国家財政や社会保障にも跳ね返ります。
バングラデシュの縫製産業に迫る試算
具体的な影響として、国際貿易センターのデータが示すのがバングラデシュです。同国は中国に次ぐ世界第2位の衣料品輸出国で、米国市場へのアクセスが経済の要となっています。
国際貿易センターによると、米国による関税率37パーセントの措置が一時停止後も維持された場合、2029年までにバングラデシュが失う可能性のある対米輸出額は年間33億ドルにのぼると試算されています。これは、縫製産業を中心とした雇用や外貨収入にとって、無視できない規模です。
衣料品産業は、特に女性を含む多くの労働者を吸収してきた分野でもあります。輸出減少が長期化すれば、工場閉鎖や賃金カットによって、家計や地域社会への影響が連鎖的に広がるおそれがあります。
輸入に頼る島国バハマ、物価高への不安
カリブ海の島国バハマも、トランプ関税の行方を注視する国の一つです。同国は、国内で生産される物資が限られ、消費する物理的な商品のほぼすべてを輸入に頼っているとされています。
そうした構造のもとで関税が引き上げられれば、輸入品の価格はほぼそのまま生活費の上昇につながります。バハマではすでに多くの世帯がインフレと生活費の高騰に苦しんでおり、今回の動きについてバハマ側は深い懸念を表明しました。
バハマ商工会議所・雇用者連合は声明で、住民が物価高と生活費の重圧に直面する中での関税強化は、非常に望ましくない知らせだと強調しました。輸入に依存する経済ほど、貿易摩擦のコストを消費者が直接引き受けざるをえない現実が浮かび上がります。
中国が呼びかける南南協力と開かれた貿易体制
こうした中、バハマ駐在の中国大使Yan Jiarong氏は最近の寄稿で、トランプ政権による関税政策が持つ破壊的な側面を指摘しました。そのうえで、グローバルサウスの国々が足並みをそろえ、関税や貿易上のいじめに共同で反対すべきだと呼びかけています。
Yan氏は、バハマを含むグローバルサウス諸国が南南協力を強化し、産業とサプライチェーンの連携を深めることで、経済のレジリエンス(回復力)と自立的な発展能力を高め、共に発展の権利を守る必要があると訴えました。南南協力とは、開発途上国同士が技術や投資、人材を協力し合う枠組みを指します。
またYan氏は、中国が多国間の貿易体制における安定の錨としての役割を果たし続ける意志を改めて強調し、一層の対外開放に取り組む姿勢を示しました。グローバルサウスにとって、中国を含むパートナーとの連携強化は、特定の大国の政策に左右されにくい経済構造を築くうえで重要な選択肢になりつつあります。
私たちが考えたい3つの論点
今回の一連の動きは、日本を含む世界の読者にとっても他人事ではありません。ニュースを追ううえで、次のような視点を持つことが有益かもしれません。
- 関税や貿易摩擦のコストは、最終的に誰が負担しているのか。
- 輸出や輸入に大きく依存する国ほど、どのようなリスクにさらされやすいのか。
- グローバルサウスの国々が南南協力や多国間の枠組みを通じて、どのように交渉力と自立性を高めていけるのか。
トランプ米大統領の関税政策をめぐる議論は、単なる米国と一部の貿易相手国の対立にとどまらず、国際経済のルールづくりや、誰がどのように成長の果実とコストを分担するのかという、より大きな問いを私たちに突きつけています。グローバルサウスの声に耳を傾けることは、その問いに向き合う第一歩と言えそうです。
Reference(s):
Experts: Global South countries suffer from Trump's tariff policy
cgtn.com








