中国の黒土地がよみがえる 4億ムー超再生で食料の未来を支える
中国で「世界で最も肥沃」とも呼ばれる黒土地が、かつて深刻な劣化に直面しました。しかし、第14次五カ年計画(2021〜2025年)の期間中に大規模な再生が進み、中国の食料の未来を支える基盤づくりが加速しています。
世界で最も肥沃な土壌に起きていたこと
黒土地は、穀物生産にとって理想的な栄養を豊富に含む土壌です。そのため、世界のさまざまな地域で「食料基地」として重要な役割を担ってきました。
中国の黒土地も例外ではなく、長年にわたって農業生産を支えてきましたが、過度な耕作や化学肥料への依存などにより、かつては深刻な土壌劣化が問題となっていました。土壌の流出や有機物の減少が進めば、収量の低下や自然災害への脆弱性につながり、食料安全保障にも影響しかねません。
第14次五カ年計画で進んだ大規模な再生
こうした状況に対し、中国は第14次五カ年計画(2021〜2025年)の期間に、黒土地の本格的な再生に取り組みました。この期間中に再生された黒土地は4億ムー(約2667万ヘクタール)を超えるとされ、非常に広大な面積におよびます。
再生の柱となったのは、次のような「土を休ませ、守る」農業技術です。
不耕起栽培:土をできるだけ「いじらない」
不耕起栽培とは、トラクターなどで畑を深く耕さず、土を極力乱さないまま作物を育てる方法です。土を起こさないことで、有機物が分解されにくくなり、土壌中の水分や微生物の環境が守られます。
黒土地のような肥沃な土壌ほど、過度な耕起でその力を失いやすいとされます。不耕起栽培は、土の「ふかふかさ」や保水力を長く保つための重要な手段になっています。
ストローリターン:ワラを資源として土に戻す
ストローリターンは、収穫後に残る稲わらやトウモロコシの茎などを焼却せず、細かく砕いて畑に戻す取り組みです。作物の残さを「ごみ」ではなく「栄養の貯金」として活用する考え方とも言えます。
ワラを土に戻すことで、有機物が補給され、土壌構造が改善します。長期的には、化学肥料への依存を減らしつつ、土の肥沃さを維持・向上させる効果が期待されます。
保全型耕作:収量と環境のバランスをとる
保全型耕作は、不耕起や少ない耕起と、ワラの還元、防風林や被覆作物の活用などを組み合わせて、土壌を守りながら生産性を高める考え方です。
土の侵食を防ぎつつ、適切な水分と養分を保つことで、収量の安定と環境負荷の低減を同時にめざします。黒土地の再生においては、こうした総合的な取り組みが重ねられてきました。
「緑の農地」と食料の未来
黒土地の再生によって、中国は農地を「緑化」し、食料供給の将来を支える基盤を整えつつあります。土壌が豊かになれば、同じ面積でも安定して収穫が得られ、異常気象や市場の変動にも対応しやすくなります。
今回の黒土地再生の取り組みは、次のような点で重要だと考えられます。
- 土壌劣化を反転させ、長期的な生産力を回復させたこと
- 農地の「量」だけでなく「質」を高める方向に舵を切ったこと
- 環境保全と食料安全保障を同時に追求するモデルを示したこと
第14次五カ年計画期間は2025年までで、現在はその最終盤にあります。このタイミングで黒土地の再生が成果として示されていることは、今後の農業政策や農村振興の方向性を考えるうえでも象徴的です。
静かに広がる「土を守る」発想
黒土地の再生は、大規模な数字だけを見ると遠い話に感じられるかもしれませんが、現場レベルでは一つひとつの畑の管理の積み重ねです。不耕起栽培やストローリターンなどは、どれも農家の作業慣行を少しずつ変えていく取り組みでもあります。
中国では、こうした農家の実践や地域ごとの工夫が、メディアを通じて紹介されるようになっています。黒土地の回復は、単なる技術プロジェクトではなく、「土を守りながら暮らしと食を支える」という考え方が広がっていくプロセスでもあります。
世界的に気候変動や人口増加が続くなかで、限られた農地の力をどう維持し、未来の世代に引き継ぐのかという問いは、多くの国や地域が共有するテーマになりつつあります。黒土地の再生をめぐる動きは、その一つの答えを示す事例として、今後も注目されそうです。
Reference(s):
cgtn.com








