AI技術革命は教育のチャンスに 中国・懐進鵬教育部長が大学改革とAI戦略を語る
人工知能(AI)が牽引する技術革命が、教育にとってどんな意味を持つのか——。中国の教育部長・懐進鵬(Huai Jinpeng)氏が、北京で開幕した全国人民代表大会の年次会議に合わせたインタビューで、AI時代の教育改革について語りました。
この記事のポイント
- AIが主導する技術革命は、教育にとって大きな要求であると同時に「改革と発展の機会」だと位置づけられている
- 中国は高等教育で数学・コンピューターサイエンスの基礎強化や、産業・科学・教育の一体的な人材育成を進める方針
- 約400万人の大学院生と3,900万人の学部生という規模を背景に、2025年にAI教育に関する白書を公表する計画も示された
AI技術革命は教育の「大きな機会」
懐氏は、新華社通信からAIモデルDeepSeekやヒューマノイドロボットに関する質問を受けた際に、AIが牽引する技術革命と産業転換が教育にもたらす影響について示しました。
あらゆる大きな技術革命と産業変革は、社会にとって大きな負担や変化をもたらす一方で、とりわけ教育に対して改革と発展の重大な機会を与える——。懐氏はこうした見方を示し、AI時代の教育は「守り」ではなく「攻め」の発想が重要だと強調しています。
高等教育の包括改革 基礎分野と学際分野を強化
こうした変化に対応するため、中国は高等教育の包括的な改革を進める方針です。懐氏が示した具体的な方向性は次の通りです。
- 数学とコンピューターサイエンスといった基礎分野で、中核となる授業(コア科目)を強化する
- これら基礎分野を支えるキーファカルティ(中核教員)を育成・配置する
- 国家戦略と整合する、質の高い基礎科目の教材を整備する
さらに中国は、新興分野や学際分野で活躍できる人材の育成にも力を入れる考えです。産業界・科学研究・教育のあいだの連携を深め、研究や技術開発だけでなく、人材育成の段階から三者を結びつけていく方針が示されました。
AI時代には、単一分野の専門性だけでなく、複数の分野をまたいで課題を解決する力が求められます。懐氏の発言は、大学教育そのものの設計を見直し、学際的な学びを広げていく方向を示していると言えます。
約400万人の大学院生と3,900万人の学部生
懐氏は、中国の高等教育機関に在籍する学生数にも触れました。中国にはおよそ400万人の大学院生と、3,900万人の学部生が在籍しているとしています。
膨大な学生規模を前提に、AI時代にふさわしいスキルやリテラシーをどのように身につけてもらうかは、大きな課題です。教育プログラムの設計、教員の育成、評価の仕組みなどを、AIを前提としたものに変えていく必要があります。
このスケールの人材育成が進めば、AI分野をはじめとする新しい産業や研究の展開にも、長期的な影響を及ぼすとみられます。
初等・中等教育でもAIリテラシーを強化 2025年に白書
改革の対象は大学だけにとどまりません。懐氏は、基礎教育(初等・中等教育)においても、デジタルとAIの時代に対応した学びを強化すると述べました。
その一環として、中国は2025年にAI教育に関する白書を公表する計画です。この白書は、デジタル社会とAI時代に必要なリテラシーやスキルを、どのように子どもたちに身につけさせていくかを整理する政策文書になるとされています。
AIを単に「便利なツール」として使うだけでなく、その仕組みや限界、社会への影響を理解できるようにすることが、今後の学校教育にとって重要なテーマになりそうです。
日本や世界への示唆 何が論点になるか
懐氏の発言は、中国の教育政策の方向性を示すと同時に、日本を含む他の国・地域にとってもいくつかの示唆を与えています。
- 数学・情報といった基礎分野をどこまで重視し、どのレベルまで全員に学ばせるのか
- 大学と企業、研究機関の連携を、人材育成の初期段階からどのように組み込むのか
- 子どもから社会人まで、AIを批判的かつ主体的に使いこなす力(AIリテラシー)をどう育てるのか
AI技術は急速に発展しており、教育制度側が追いつくのは簡単ではありません。その中で、中国が高等教育から基礎教育までを視野に入れた改革を打ち出していることは、各国が自らの教育のあり方を考え直すきっかけにもなり得ます。
AI時代の人材をどう育てるか——。今回の懐進鵬教育部長の発言は、その問いに対する一つの答えを示す動きとして、今後も注目されそうです。
Reference(s):
AI-led tech boom brings opportunities: China's education minister
cgtn.com








