敦煌壁画とダンス 時を超える物語「Restoring the mural: A dance through time」 video poster
敦煌壁画とダンスが出会う「Restoring the mural: A dance through time」
2025年の今、敦煌壁画を題材にした物語「Restoring the mural: A dance through time」が、ダンスと美術をつなぐ試みとして注目されています。時間を超えてつながるダンサーたちの視点から、文化財と向き合う新しい姿を描いているからです。
物語の中心にいるのは、現代を生きるダンス専攻の学生・Zhao Muyunと、過去の時代に生きるダンサーのChen Xi、そしてShen Huan。彼らは実際に同じ舞台に立つことはできませんが、敦煌の壁画を手がかりに「時間を超えた共演」に挑みます。
現代のダンサー・Zhao Muyunが敦煌で学んだもの
Zhao Muyunは、敦煌壁画の保存や研究で知られる敦煌研究院を訪れ、壁画の色彩設計を本格的に学びます。どの色がどの場面に使われているのか、なぜその組み合わせなのかといった、美術史と技法の両方にまたがる知識です。
彼女は、壁画の色が時間の経過とともにどう変化してきたのか、当時の絵師たちがどのように顔料を調合し、塗り重ねていったのかを知っていきます。この学びが、そのまま物語の鍵になります。
というのも、Zhao Muyunは学んだことを、過去に生きるダンサーのChen XiとShen Huanに「伝える」役割を担っているからです。時間を超えた形で共有された色彩の知識が、過去の舞台美術や壁画の修復を支え、二人のダンスにも新しい力を与えていきます。
卒業制作は敦煌で上演 時を隔てた共演の約束
同じころ、Zhao Muyunとクラスメイトたちは、卒業制作として取り組んできたダンス作品を敦煌で上演してほしいという招待を受け取ります。学生たちにとって、敦煌という場所で自分たちの表現を披露できるチャンスは特別な意味を持ちます。
一方で、Chen XiとShen Huanは過去の世界にいます。物理的にも時間的にも、彼らが同じ舞台に立つことはありません。それでも二人は、時間を挟んで一つのダンスを共につくろうと約束します。
観客の前で同時に踊ることはできなくても、共通の振り付けやモチーフ、敦煌壁画の色や構図を共有しながら「同じ作品を別の時間で踊る」。その発想が、物語全体を貫くテーマになっています。
壁画の色彩がダンスになる
この作品で興味深いのは、敦煌壁画の色彩研究が、そのまま舞台表現に落とし込まれている点です。色の選び方が、単なる見た目の美しさだけでなく、登場人物の心情や時間の流れを示す役割も持っています。
たとえば、物語の中では次のような形で色彩がダンスと結びついていきます。
- 壁画の配色をもとにした衣装デザインで、過去と現在のシーンを視覚的に対比させる
- 壁画に使われる色の「褪せ方」を、振りの強弱やテンポの変化として表現する
- 特定の色をキーワードにし、その色が登場するたびに同じ動きを繰り返すことで、時間を超えたつながりを感じさせる
こうした工夫によって、観客は「絵を見る」のではなく、「色が踊る」のを体感します。美術館で静かに鑑賞する対象だった壁画が、身体表現を通じて生きた物語として立ち上がるのです。
2025年の私たちへの静かな問いかけ
時間を超えて共演を約束した二人のダンサーの物語は、2025年を生きる私たちにいくつかの問いを投げかけます。文化財を守るとは何か、過去の人々とどう向き合うのか、そして伝統を自分の表現にどう取り入れるのかという問いです。
この物語が描くのは、単に「古いものを大事にしましょう」というメッセージではありません。むしろ、過去の色彩や技法を丹念に学びながら、それを自分たちの言葉や身体で語り直そうとする若い世代の姿です。
スマートフォンの画面越しに世界のニュースや文化に触れられる今だからこそ、時間も空間も超えた対話のあり方を考えさせてくれる作品と言えるでしょう。敦煌の砂漠の中で生まれた壁画が、ダンスという形で再びよみがえり、別の時代に生きる人々を静かにつないでいきます。
Reference(s):
cgtn.com



