中国主導チーム、史上最大の宇宙シミュレーション「HyperMillennium」を公開
宇宙の成り立ちを解き明かすための、これまでにない規模のデジタルツールが誕生しました。中国主導の国際研究チームが、史上最大となる宇宙論的シミュレーション「HyperMillennium」を公開し、科学界に大きな波紋を広げています。
仮想宇宙の中に再現された120億光年の世界
このシミュレーションは、一辺が120億光年という途方もない大きさの立方体を舞台とし、4.2兆個もの仮想の暗黒物質粒子を使用しています。ビッグバン直後の状態から始まり、重力の作用をステップごとに計算する「N体数値シミュレーション」という手法で、宇宙の大規模構造が100億年にわたってどのように進化してきたかを、高い精度で再現することに成功しました。
銀河形成の謎と暗黒物質・暗黒エネルギー研究への応用
HyperMillenniumの最大の特徴は、単に物質の分布を再現するだけでなく、銀河形成の物理モデルを組み込んでいる点です。その結果、仮想宇宙の中に、銀河の位置、明るさ、その他の重要な特性を詳細に記したカタログが生成されます。これは、宇宙の大部分を占めながら正体不明の「暗黒物質」と「暗黒エネルギー」の研究に理論的な裏付けを提供するほか、中国の宇宙ステーション望遠鏡や欧州宇宙機関(ESA)の「ユークリッド」計画など、新世代の銀河観測プロジェクトを強力に後押しするものと期待されています。
10年以上の歳月と国内技術が生み出した計算の奇跡
このような大規模シミュレーションには膨大な計算資源が必要です。研究チームは、中国国内のスーパーコンピュータ向けに独自開発したソフトウェア「PhotoNs」を使用。アルゴリズムと最適化に10年以上を費やし、1万枚以上のアクセラレーターカードを効率的に運用する手法を確立しました。プロジェクト全体では、1億CPUコア時間以上、1000万アクセラレーターカード時間を消費し、生データと処理済みデータを合わせて約13ペタバイトという莫大な量の情報を生成しました。
国際的な科学者からも高い評価
この成果に対して、国際的な天文学者たちから称賛の声が上がっています。テキサス大学オースティン校のマイク・ボイラン=コルチン教授は、このシミュレーションを「計算の奇跡」と呼び、暗黒エネルギーや初期宇宙の秘密を解くのに役立つと評価しました。また、ドイツのマックス・プランク天体物理学研究所所長、フォルカー・シュプリンゲル氏は、このシミュレーションが「数値宇宙論の限界を再定義した」と述べ、その規模と精度の高さに「非常に感銘を受けた」とコメントしています。
実在する銀河団との比較でも高い一致を確認
このプロジェクトから得られた最初の研究成果は、最近、学術誌『Monthly Notices of the Royal Astronomical Society』に掲載されました。シミュレーションの威力を示す一例として、チームは地球から約40億光年離れた有名な銀河団「Abell 2744」の実際の観測データとシミュレーション結果を比較。その結果、ピクセルレベルで驚くほど一致し、銀河団が衝突するような極めて複雑な環境下でも、標準的な宇宙論モデルが有効であることが確認されました。
中国科学研究院国家天文台によれば、シミュレーションの第一弾データはすでに、天文学研究のためのプラットフォーム「国家天文データセンター」を通じて、全球の科学コミュニティに公開されています。この"デジタル宇宙"が、今後数年にわたる宇宙研究の礎となることは間違いないでしょう。
Reference(s):
cgtn.com




