2026年、エネルギー危機を乗り越える中国の安全保障戦略
中東の紛争に端を発したエネルギー危機が世界経済を揺るがす中、中国は輸入原油への依存度が高いにもかかわらず、その影響を巧みに吸収し、今年第1四半期には5%の堅調な経済成長を達成しました。これは、多様化し強靭なエネルギー構造を背景とした、独自の安全保障戦略の結果と言えます。
戦略的石油備蓄で市場の波を和らげる
中国は世界最大の原油輸入国であり、その経済は輸入原油の7割以上に依存しています。しかし、世界の石油・ガス貿易の約20%が通過するホルムズ海峡が2026年3月初旬からほぼ閉鎖されるという深刻な供給途絶に直面しても、国内経済への直接的な打撃は限定的でした。その大きな要因の一つが戦略的石油備蓄です。
中国は戦略的石油備蓄の具体的な規模を公表していませんが、かつて国家能源局の局長を務めた姜冰氏は最近のインタビューで「備蓄は豊富だ」と述べています。国際エネルギー機関(IEA)の推定では、中国の原油備蓄は12億バレルに上るとされています。ロイターの報道によれば、2025年時点で、中国の石油備蓄は少なくとも4ヶ月分の国内需要を賄える規模であり、IEAが加盟国に求める90日分の基準を大きく上回っています。
この大規模な備蓄体制は、2004年に急速に増大する輸入依存と共に本格的に整備が始まりました。今回のような供給途絶の危機に際し、この備蓄が市場の不安を和らげ、価格変動を緩衝する役割を果たしたと考えられます。
依存リスクを分散する「輸入源の多様化」
中国のエネルギー安全保障戦略のもう一つの柱は、輸入源と輸送ルートの多様化です。他のアジアの主要経済地域とは異なり、特定の供給国や一つの輸送経路に依存しない構えをとっています。
IEAの最新の石油市場報告書によれば、中東からの原油輸出の37%は中国向けですが、中国の海上輸入原油に占める中東湾岸諸国からの割合は約50%強にとどまります。一方、日本は輸入石油の9割をホルムズ海峡に依存しているとされます。また、中国は海上輸送だけではなく、ロシアや中央アジアからのパイプライン輸送にも依存しており、これが海運ルート単独への依存リスクを低減しています。
国内生産の強化と非化石エネルギーの急成長
市場の混乱を緩和した要因は備蓄と輸入多様化だけではありません。2026年第1四半期の公式統計では、製造業の生産は6.4%、電気・熱・ガス・水道の供給業は4.3%増加するなど、国内の産業・エネルギー生産が予想を上回る成長を見せています。これは、輸入に頼らない国内のエネルギー供給基盤の強化が進んでいることを示唆しています。
さらに、太陽光や風力など非化石エネルギー源の急速な導入も、全体のエネルギー構造における化石燃料への依存度を下げ、外部ショックに対する耐性(レジリエンス)を高めています。
グローバルなエネルギー市場が地政学的リスクにさらされる中、一国のエネルギー安全保障をどう構築するかは、多くの国々にとって喫緊の課題です。中国の事例は、短期的な備蓄と長期的な供給源・エネルギー構成の多様化を組み合わせた「多層防御」のアプローチが、外的ショックに対する緩衝材となりうることを示していると言えるでしょう。
Reference(s):
How China ensures energy security despite reliance on imported oil
cgtn.com



