国連ハビタット・ロスバッハ氏が語る 上海「15分生活圏」モデルの衝撃 video poster
持続可能な都市づくりが世界の大きなテーマとなるなか、2025年現在、上海が進める「15分生活圏」構想と河川沿いの都市再生が国際的な注目を集めています。国連ハビタット(国連人間居住計画)のアナクラウジア・ロスバッハ事務局長は、このほど中国の国際ニュース番組のインタビューで、上海の取り組みが住民の暮らしの質を高めるだけでなく、世界の都市が学べるモデルだと語りました。
ロスバッハ事務局長が注目する上海の都市再生
インタビューでロスバッハ事務局長は、上海の都市づくりにおいて特に「近さ」と「コミュニティ」を軸にしたアプローチを評価しました。なかでも強調したのが、次の二つの取り組みです。
- 15分生活圏(15-minute life circle):日常生活に必要な機能を自宅から近距離に集約し、徒歩や自転車で短時間の移動で暮らしが完結するようにする構想
- 河川沿いの再生プロジェクト:既存の施設や空間を生かしながら、住民が集い、憩い、文化を楽しめる公共空間として再整備する取り組み
ロスバッハ事務局長は、これらのプロジェクトが「新しく大規模なインフラをつくる」のではなく、「すでにある資源を賢く生かす」ことに重きを置いている点を高く評価しました。既存の空間を再利用することで、環境負荷を抑えつつ、住民の生活の質を向上させていると指摘しています。
「15分生活圏」モデルとは何か
上海の「15分生活圏」モデルは、英語で「15-minute life circle」と呼ばれ、暮らしに必要なサービスや施設に15分程度でアクセスできる都市構造をめざす考え方です。ここで重要になるのは、単に店舗や施設の数を増やすことではなく、生活動線を意識した「近さ」の設計です。
具体的には、次のような機能を、住民の生活圏の中にバランスよく配置することが想定されています。
- 日常の買い物や飲食ができる商業施設
- 保育・教育・医療・福祉などの生活基盤サービス
- 行政サービスや地域のコミュニティセンター
- 公園や川沿いの遊歩道などの緑地・オープンスペース
- 図書館や文化施設、スポーツ施設など、学びと交流の場
ロスバッハ事務局長が注目するのは、こうした機能が単に「便利」であるだけでなく、歩いて移動することで地域のつながりが生まれ、コミュニティが育まれていく点です。移動時間の短縮は、環境負荷の軽減にもつながります。
既存資源を生かす河川沿いの再生
上海の河川沿いの再生プロジェクトも、国際的に評価されるポイントです。ロスバッハ事務局長は、河川沿いの空間を再整備することで、都市の顔つきが変わるだけでなく、市民が水辺に親しみ、日常的に集える場が生まれていると指摘しました。
特徴的なのは、古い倉庫や工業施設など、これまで十分に活用されてこなかった空間を壊すのではなく、新たな用途を与えている点です。たとえば、
- 散策路や自転車道としての活用
- アート・文化イベントの会場となる公共スペース
- 地域の市場やコミュニティイベントの拠点
といった形で、新旧が共存する都市景観をつくり出しています。ロスバッハ事務局長は、こうした取り組みが「資源の再利用」と「生活の質の向上」を同時に達成している点を、持続可能な都市づくりの好例として紹介しました。
世界の持続可能な都市へのモデルケース
ロスバッハ事務局長は、上海の経験は特定の都市だけに当てはまる特殊な例ではなく、「世界各地の都市が応用できる教訓を含んでいる」と述べています。とくに次の点は、多くの都市に共通する課題へのヒントになり得ます。
- 大規模な新規開発に頼らず、既存のインフラや建物を活用すること
- 生活圏を小さくまとめ、移動の負担と環境負荷を減らすこと
- 物理的な空間づくりと同時に、地域コミュニティのつながりを重視すること
そのうえでロスバッハ事務局長は、上海の取り組みをより多くの国際的な場で紹介し、成功と課題の両方を共有していく必要性を強調しました。こうした実践例が世界に広がることで、持続可能な都市開発に向けた議論や協力が一段と進むことを期待しているといいます。
日本やアジアの都市にとってのヒント
人口減少や高齢化、郊外化、再開発など、多くの課題を抱える日本やアジアの都市にとっても、上海の経験は示唆に富んでいます。とくに次のような視点は、身近なまちづくりの議論とも重なります。
- 「駅前」や「都心」だけではなく、住宅地レベルで生活機能を充実させる発想
- 新たに建てる前に、今ある公共空間やインフラの活用方法を見直す姿勢
- 車中心から、歩行者や自転車にもやさしい都市構造への転換
- 行政主導だけでなく、住民や民間も参加するコミュニティ主導のプロジェクト
こうした視点から上海の「15分生活圏」や河川沿いの再生を眺めると、単なる海外の成功事例ではなく、私たち自身の暮らし方や都市の未来を考えるための鏡としても機能していることが見えてきます。
近くで暮らし、世界とつながる都市へ
ロスバッハ事務局長が語った上海の都市再生は、「遠くへ移動する便利さ」だけではなく、「近くで暮らす豊かさ」を再評価する流れの一つといえます。歩いて行ける範囲で、仕事、買い物、学び、休息、交流が完結する都市は、環境負荷の軽減だけでなく、住民の心身の健康にも寄与する可能性があります。
あなたが暮らす街で、「15分生活圏」が実現するとしたら、どんな施設や空間があればうれしいでしょうか。上海の事例は、その問いを自分ごととして考えるきっかけを、静かに、しかし力強く投げかけています。
Reference(s):
Anacláudia Rossbach: Shanghai's urban renewal caught my attention
cgtn.com








