ミラノ・コルティナ冬季五輪、AI中継が進化 360度リプレイやOlympic GPT
2026年のミラノ・コルティナ冬季オリンピックに向けて、放送現場と視聴体験を同時に変える「AI中継の新機能」が明らかになりました。開幕が近づく中、競技の見え方だけでなく、情報の届け方そのものが更新されそうです。
オンライン説明会で示された「AIで変わる中継」
大会の放送を担うOlympic Broadcasting Services(OBS)は、1月14日(現地時間の水曜日)に行われたオンラインのメディア向けラウンドテーブルで、AIを活用した複数の技術を紹介しました。説明したのはOBSのCEOで、Olympic Channel Servicesのエグゼクティブディレクターも務めるイアニス・エクサルコス氏です。
まずは画面の体験が変わる:360度リプレイ、カーリング、ドローン
AI対応の「リアルタイム360度リプレイ」
注目の画面上の新機能として挙げられたのが、Alibabaと開発したAI対応のリアルタイム360度リプレイです。これは複数カメラの映像を組み合わせ、解析(ストロボ的な分析)によって、数秒のうちに多角度ビュー、フリーズフレーム、スローモーションのシーケンスを生成する仕組みです。2024年のパリ大会で導入された技術が、冬季五輪でも本格的に活用される形になります。
冬季五輪で初:カーリングの「ストーン追跡」
冬季五輪として初登場になるのが、カーリングのAIストーン追跡システムです。各ストーンの軌道、速度、回転をリアルタイムで可視化し、オーバーレイ表示(画面に重ねる図形・数値)とデータで、戦略のニュアンスを視聴者に伝えやすくします。「なぜその一投なのか」が言葉だけでなく映像で追えるようになるのがポイントです。
滑走競技にFPVドローン:高速の“体感”映像へ
ボブスレーやリュージュといった滑走競技では、FPV(First Person View:操縦者目線)ドローンの投入も計画されています。エクサルコス氏は、高速で選手を追う映像が「競技の一部になったように感じられる」体験をもたらすと説明しました。
「分からない」を減らす:Olympic GPTがリアルタイム案内役に
ファン向けの新ツールとして、AIツール「Olympic GPT」も立ち上げられる予定です。リアルタイムの結果、ルール、検証済みの情報を提供し、観戦中に生まれがちな疑問(得点の仕組み、反則、競技の進行など)をその場で解消する狙いがあります。
裏側の制作も変える:映像の洪水を整理し、ハイライトを量産する
ライブ映像を“検索できる素材”に変える
大会では膨大なライブ映像が生まれます。そこでテストされているのが「Automatic Media Description」プラットフォームです。エクサルコス氏によると、AIが中継映像を検索可能なクリップに分解し、ショットの説明やキーワードを提案し、重要場面やハイライトを素早く見つける手助けをします。結果として、ストーリーテリング(編集・構成)の速度と扱いやすさが上がる、という位置づけです。
自動ハイライト生成:冬季五輪では初の本格運用へ
配信・展開面では、自動ハイライト生成システムも導入されます。この仕組みは、パリ2024で放送局向けに10万本を超えるユニーククリップを生み出したとされ、冬季五輪では初めての活用になります。競技数が多い大会で「見逃しを減らす」方向に働く一方、何が“見どころ”として切り取られるのかという編集の基準も、これまで以上に注目されそうです。
中継車からクラウドへ:仮想OBバンで現場負担を軽くする
インフラ面の変化として示されたのが、クラウド基盤を使う「仮想OBバン(中継制作機能の仮想化)」へのシフトです。従来型の放送トラックと比べ、会場の設営スペースと電力使用を最大50%削減できる見込みだとしています。大会運営の制約が強い冬季会場では、こうした省スペース化・省電力化が制作の自由度にも影響し得ます。
観戦はどう変わる?チェックしたいポイント
- リプレイが「角度の選択」から「理解の補助」へ:多角度・解析が、判定や技術の理解をどこまで助けるか。
- データ表示の作法:カーリングの軌道・回転など、情報量が増えるほど“見やすさ”が価値になる。
- ハイライトの作られ方:自動生成が普及するほど、見どころの偏りをどう抑えるかが問われる。
- 現場の負担軽減:クラウド化が制作スピードや柔軟性にどう反映されるか。
AIは「新しい映像表現」を増やすだけでなく、「情報の確からしさ」「制作の持続性」「見どころの選び方」まで巻き込みながら中継の形を作っていきます。ミラノ・コルティナ大会では、その変化が視聴者の体験としてどこまで自然に定着するのかが、静かな見どころになりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








